社会人の宅建試験勉強

 宅建試験の過去問を取り上げ、過去問を通じて勉強をしていきます。
@過去問の解説
A過去問の選択肢や問題文を変更した場合はどうなるか
 という流れで進んで行きます。
 今回は平成17年度試験問題の解説をしながら、問題を通じて、応用を見ていきます。

問1

 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1.買主Bが被保佐人であり,保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合,当該売買契約は当初から無効である。

【解説】
 被保佐人が保佐人の同意を得ずに、不動産の売買をした場合、その契約は『取り消すことができる。』したがって、当該売買契約が、当初から無効、となるわけではない。したがって、誤りの選択肢。

【発展】
 この選択肢の「被保佐人」が「未成年者」や「成年被後見人」および「被補助人」の場合はどうなるだろうか。

@未成年者の場合…未成年者が法定代理人の同意を得ずになした法律行為は取り消すことができる。したがって、被保佐人の場合と同様に、当然に無効となることはなく、単に「取り消すことができる」に過ぎない。この例外として、未成年者が「婚姻している場合」と「営業の許可を得て、その営業の範囲内でした法律行為」の場合は、未成年者が単独で契約をしても、もはや取り消すことはできない。

A成年被後見人の場合…成年被後見人は日常品の購入等を除いて、すべて契約を取り消すことができる。たとえ、成年後見人の同意を得てした場合でも取り消すことができる。この場合も同様に「取り消すことができる」だけであって、当然に無効となるわけではない。

B被補助人の場合…被補助人の場合は、裁判所であらかじめ補助人の同意が必要と決められた行為に限って、補助人の同意なくした法律行為を取り消すことができる。つまり、あらかじめ「不動産の売買契約をするにあたって補助人の同意が必要」と定められた場合に限り、当該売買契約を取り消すことができる。いずれにしても、「取り消すことができる」だけであって、当然に無効となるわけではない。

2.買主Cが意思無能力者であった場合,Cは,Aとの間で締結した売買契約を取り消せば,当該契約を無効にできる。

【解説】
 意志能力の無い者が法律行為をした場合、当該法律行為は無効である。つまり、取り消すまでもなく、当初から無効である。したがって、「取り消せば、当該契約を無効にできる。」というこの選択肢は誤りとなる。
 意思能力がない、とは、自分のする法律行為の結果がどうなるか理解できない、ということであり、幼児や泥酔状態の者や、強度の精神的障害をもっている者などが該当する。


3.買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合,DがAとの間で売買契約を締結しても,当該土地の所有権はDに帰属しない。

【解説】
 物の所有者になれたり、契約の当事者となれる権利を有するのは、人間である。しかし、株式会社などの法人が数多く存在しており、「人間」でなくても、この団体に同じような権利を与えた方がよいと思われる。したがって、民法では一定の条件を備えた団体を人とみなし、権利を持てるようにした。これが法による人、という意味合いで「法人」と呼ばれる。これに比べて、本当の人間のことを「自然人」と呼ぶ。
 株式会社などの会社は全て法人であり(会社法)、当然に権利を持つから、法人名で所有権を取得する。また、法人でなくても、一定の条件をクリアすればその団体に権利を持たせることができる。この一定の条件は地縁団体(行政法)などの法律の規定に基づく。したがって、このような法律の規定に基づかない、権利能力を有しない団体は、権利の主体となることができない。したがって、この選択肢の場合、団体Dは権利を有しないのであるから、当該土地の所有権はDに帰属しない。本選択肢は正しい。

4.買主Eが婚姻している未成年者であり,当該婚姻がEの父母の一方の同意を得られないままになされたものである場合には,Eは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。

【解説】
 選択肢1の解説の通り。未成年者が父母の同意(原則は父母双方の同意が必要だが、父母のどちらか一方の同意が得られれば、法律行為は取り消すことができない。)なくしたした法律行為は取り消すことができる。その例外として、「婚姻している場合」と「営業の許可を受けた場合で、その営業の範囲内でした法律行為」は取り消すことができない。したがって、本選択肢では、未成年者は既に婚姻しており、当該未成年者のした法律行為はすべて完全に有効な法律行為となる。取り消すことができないので、本選択肢は誤り。

【発展】
 本肢の「買主E」が婚姻をしていたが、その後離婚して現在独身の未成年の場合はどうだろうか。この場合でも、一度婚姻して社会的信用を得たわけで、その後の法律行為もすべて完全に有効となる。したがって、一度婚姻すれば、その後たとえ離婚したとしても、もはや当該未成年者のした法律行為は取り消すことができない。

平成17年度宅建本試験問題1から学ぶポイント

(1)意思無能力者のした法律行為は取り消すまでもなく、当初から無効である。

(2)制限行為能力者(未成年、成年被後見人、被保佐人、(被補助人))が法定代理人等(後見人、保佐人、補助人)の同意を得ずにした法律行為は一応有効である。ただ取り消すことができるだけで、当然に無効ではない。

(3)未成年者が法定代理人の同意等を得ることなく、完全に有効な法律行為をできるのは次の二つの場合である。
  @(離婚したとしても過去に)婚姻をしている場合
  A法定代理人から営業の許可を受け、その許可された営業の範囲内で行った場合

平成17年度宅建本試験問題1の発展問題

問題
 自己所有の土地を売却するAの売買契約に関する次の各選択肢の正誤とその理由を考えよ。

1.買主Bが成年被後見人であり、当該売買契約を締結することについて、成年後見人の同意を得ていた場合は、当該売買契約は取り消すことができない。

2.買主Cが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずに当該売買契約を締結した場合、これを理由に売主であるAは当該売買契約を取り消すことができる。

3.買主Dが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずに当該売買契約を締結するにあたり、買主Dが詐術により自己に行為能力があると、売主Aを誤信させ、当該売買契約を締結した場合であっても、当該売買契約を取り消すことができる。

4.買主Eが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずに当該売買契約を締結するにあたり、買主Dが詐術により自己に行為能力があると、売主Aを誤信させようとしたが、売主Aは買主Dが被保佐人であることを知ったうえで当該売買契約を締結した。この場合、買主Dは当該売買契約を取り消すことができる。

5.買主Fが意思無能力者であった場合、これを理由として売主であるAは当該売買契約の無効を主張できる。
 
解説
1.【誤】成年被後見人による不動産売買契約は、例え成年後見人の同意を得ていても、取り消すことができる。有効に契約するには、成年後見人が代理人として契約しなければならない。

2.【誤】制限行為能力者を理由として取り消すことができるという規定は、当該制限行為能力者の保護のためである。したがって、相手方は契約を取り消すことができない。

3.【誤】制限行為能力者が詐術を用いて自己に行為能力があると相手方に誤信させた場合には、当該制限行為能力者を保護するよりも、むしろだまされた取引の相手方を保護するべきである。したがって、この場合は、もはや取り消すことはできない。

4.【正】上記3の解説をふまえた上で。取り消すことができない、としたのは詐術を用いた行為制限能力者への制裁ではなく、取引の相手方を保護しよう、という主旨である。本選択肢の場合、取引の相手方は制限行為能力者であることを知っており、相手方を保護する必要ない。したがって、取り消すことができる。

5.【正】取り消すことのできる法律行為は、取り消すことができる者(取消権者)しか、取消を主張することができないが、無効の場合は、その法律行為は当然に無効なのであって、誰でも、いつでも当該法律行為の無効を主張することができる。



本問題以外で各自確認すべき事項

1.第三者との関係。(売主が意思無能力者、制限行為能力者の場合で、買主が善意の第三者に当該不動産を売却してしまった場合の無効、取消を主張できるか、という点。簡単に言えば、主張できる。)

過去問研究平成17年