社会人の宅建試験勉強

 宅建試験の過去問を取り上げ、過去問を通じて勉強をしていきます。
@過去問の解説
A過去問の選択肢や問題文を変更した場合はどうなるか
 という流れで進んで行きます。
 今回は平成17年度試験問題の解説をしながら、問題を通じて、応用を見ていきます。

問13
 借地人Aが、平成15年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。

1.甲地上のA所有の建物が登記されている場合には、AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Bの承諾の有無にかかわらず、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。

【解説】
 借地権の譲渡・転貸には、賃貸人の承諾が必要である。承諾なしに無断で譲渡・転貸された場合、譲受人または転借人はその借地権を主張することができない。したがって、本肢の場合、CはBに対して甲地の借地権を主張できない。本肢は誤った記述。

2.Aが借地権をCに対して譲渡するに当たり、Bに不利になるおそれがないにもかかわらず、Bが借地権の譲渡を承諾しない場合には、AはBの承諾に代わる許可を与えるように裁判所に申し立てることができる。

【解説】
 選択肢1の解説通り、借地権の譲渡・転貸には、賃貸人の承諾が必要である。しかし、本肢のように、特段賃貸人に不利になるおそれがないにもかかわらず、一方的に承諾を拒否するのは不都合である。この場合、賃借人は賃貸人の承諾に代わる許可を与えるよう裁判所に申し立てることができる。本肢は正しい記述である。

3.Aが借地上の建物をDに賃貸している場合には、AはあらかじめDの同意を得ておかなければ、借地権を譲渡することはできない。

【解説】
 借地権の譲渡については、賃借人と譲受人との間の問題であり、賃貸人の承諾さえあれば有効に成立する。借地上の建物の賃借人は関係ない。よって本肢は誤りの記述。

4.AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を20年とする借地契約である場合には、AはBの承諾の有無にかかわらず、借地権をCに対して譲渡することができ、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。

【解説】
 通常の借地契約でも、定期借地、事業用借地であっても、賃借権の譲渡・転貸に賃貸人の承諾が必要であることには変わりない。よって誤りの記述。
 
【発展】
 基本的な理解として、物権はその処分は自由である。債権はその処分は自由にできない場合がある。物権とは所有権、抵当権、地上権等であり、これらを担保に入れる、貸す、譲渡する、放棄する、など誰の承諾も得ることなく、自由に処分できる。これに比べて債権は「○○をしてくれ」と他人に請求する権利であるが、物権と比べて弱い性質を持つ。賃借権も「○○を貸してくれ」という請求権=債権である。本問のように賃貸人の承諾がなければ譲渡・転貸ができない。他にも債権譲渡の要件などがある。


平成17年度宅建本試験問題13から学ぶポイント
 
★物権の処分は自由にできる。債権の処分は自由にできない場合がある。

★賃借権は賃貸人の承諾がなければ、原則として無断で転貸・譲渡できない。

★無断で転貸・譲渡された場合、賃貸人は賃借人との賃貸借契約を解除することができる。

★ただし、当該転貸が背信的行為でない場合は解除できない。(事情により親戚に数日貸す、など)

★転貸・譲渡の承諾をするにあたり、なんら不利になることがないにもかかわらず、賃貸人が承諾をしない場合は、賃借人は裁判所に対して、承諾に代わる許可を申し立てることができる。


本問題(又は上記ポイント)以外で各自確認すべき事項

●無断譲渡の効果

●転貸人がいる場合の、賃借人と賃貸人の契約が解除された場合の転貸人の地位

●転貸人と賃貸人、賃借人との賃料の請求関係

など、、、


過去問研究平成17年