社会人の宅建試験勉強

 宅建試験の過去問を取り上げ、過去問を通じて勉強をしていきます。
@過去問の解説
A過去問の選択肢や問題文を変更した場合はどうなるか
 という流れで進んで行きます。
 今回は平成17年度試験問題の解説をしながら、問題を通じて、応用を見ていきます。

問2

 AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが,その意思表示は錯誤によるものであった。この場合,次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。

1.錯誤が,売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり,法律行為の要素の錯誤と認められる場合であっても,この売却の意思表示が無効となることはない。

【解説】
 錯誤による意思表示の場合、法律行為の要素に錯誤があり、なおかつ表意者(この場合はA)に重大な過失がなければ、表意者は無効を主張できる。表意者に重大な過失がある場合には、無効を主張できない。なお、単なる「過失」ではなく「重大な過失」としているのは、錯誤による意思表示をする場合はそもそも過失があるからであり、単なる過失はほとんどすべての錯誤にあると言ってもいい。したがって、重大な過失がある場合にのみ無効を主張できないこととした。本選択肢は「無効となることはない」としているので誤り。

2.錯誤が,売却の意思表示をなすについての動機に関するものであり,それを当該意思表示の内容としてAがBに対して表示した場合であっても,この売却の意思表示が無効となることはない。

【解説】
 これは、判例問題である。しかし、この判例は非常に有名で良く試験に出題されるものである。
 動機の錯誤は、相手方に表示された場合には、錯誤を理由として無効を主張することができる。したがって、「無効となることはない」というこの選択肢は誤り。
 ちなみに、学説では様々な意見があるが、深入りせずに上記の通り「動機の錯誤→相手方に表示された場合は無効」と覚えれば試験上は問題ない。

3.錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合,意思表示者であるAに重過失があるときは,Aは自らその無効を主張することができない。

【解説】
 選択肢1の解説通り。表意者に重大な過失があるときは、その無効を主張できない。したがって、本選択肢は正しい。

4.錯誤を理由としてこの売却の意思表示が無効となる場合,意思表示者であるAがその錯誤を認めていないときは,Bはこの売却の意思表示の無効を主張できる。

【解説】
 本来無効である場合、誰でも無効を主張できる。しかし、錯誤による意思表示の無効は例外であり、原則として表意者しか無効を主張することができない。これは、錯誤による意思表示の無効の規定は、表意者の保護のための規定であり、保護される表意者が無効を主張しないのであれば、他の者が無効を主張する必要性はないからである。したがって、相手方であるBが意思表示の無効を主張できる、とする本肢は誤りである。

【発展】
 ***表意者以外が無効を主張できる場合***
 売主A、買主Bで甲不動産の売買契約を締結。売主Aに重大な過失無く、法律行為に要素の錯誤がある。Aも要素の錯誤を認めている。しかし、契約の無効を主張する意思はない。
 XはAに対して金銭債権を有している。ところが、Aが唯一の財産である甲不動産をBに売却してしまったため、Aは無資力となってしまった。
 この場合、Aの債権者であるXは、当該売買契約の無効を主張することができる。
 このように、例外的に、第三者が表意者に対する債権を保全する必要があって、なおかつ表意者が要素の錯誤を認めている場合には、表意者に無効を主張する意思がなくても、当該第三者は表意者の意思表示の無効を主張することができる。

平成17年度宅建本試験問題2から学ぶポイント

(1)法律行為の要素に錯誤がある場合、表意者は当該意思表示の無効を主張することができる。ただし、表意者に重大な過失がある場合は、無効を主張することはでいない。

(2)原則として錯誤による無効を主張することができるのは、表意者本人のみである。(例外は上記解説を参照)

平成17年度宅建本試験問題2の発展問題

問題
 AがBに対し土地の売却の意思表示をしたが,その意思表示は錯誤によるものであった。この場合,次の各選択肢の正誤とその理由を考えよ。

1.錯誤が,売却の意思表示の内容の重要な部分に関するものであり,法律行為の要素の錯誤と認められる場合はすべて、Aは売却の意思表示の無効を主張することができる。

2.Bは善意の第三者Cに対し、当該土地を売却した。錯誤を理由としてAB間の意思表示が無効となる場合には、Aは当該第三者Cに対しても、AB間の無効を主張することができる。

3.錯誤を理由としてAB間の意思表示が無効となる場合、Aが錯誤による無効を主張する前に、Bが当該土地について所有権移転登記を受けていた場合には、AはBに対し、錯誤による無効を主張することができない。

4.錯誤を理由としてAB間の意思表示が無効となる場合、Aが錯誤による無効を主張する前に、Bが善意の第三者Cに当該土地を売却し、AからB、BからCへと所有権移転登記がなされた場合、AはCに対し、錯誤による無効を主張することができない。
 
解説
1.【誤】Aに重大な過失がある場合は無効は認められない。

2.【正】無効である以上、Bは当該土地の所有者となることはない。したがって、当該第三者の善意悪意を問わず、無効を主張することができる。

3.【誤】ABは売主買主の関係であり、そもそも登記による対抗関係に立たない。

4.【誤】選択肢2の解説通り、Bは当該土地の所有者となることはない。したがって、Cは無権利者Bから当該土地を買い受けたことになり、Cも同様に当該土地の所有者となることはない。よって、Aは無効を主張できる。



本問題以外で各自確認すべき事項

1.第三者との関係。

2.心理留保、通謀虚偽表示について。平成17年度試験では出題ないため、平成18年、19年度に出題される可能性大。錯誤、心理留保、虚偽表示は必ず出題される。

過去問研究平成17年