問3
買主Aが,Bの代理人Cとの間でB所有の甲地の売買契約を締結する場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはいくつあるか。
ア CがBの代理人であることをAに告げていなくても,Aがその旨を知っていれば,当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
【解説】 民法上の代理人は、本人のために法律行為をする際は、相手方にその旨を明らかにしなければならない。相手方の保護のためである。相手方に対して本人のためにする旨を伝えなかったときは、当該代理人と相手方との法律行為となり、その効果は本人に及ばない。これが原則であり、『顕名主義』という。 このように、顕名主義の主旨は取引の相手方を保護する者であり、取引の相手方が本人のためにするという事実を知っていれば、相手方を保護する必要がない。つまり、本選択肢の場合は、代理人のした法律行為の効果は、本人に及ぶ。その結果Aは有効に甲地を取得することができる。正しい選択肢。
【発展】 本選択肢でAがその旨を知らなかった場合は、上述の通り、AとCとの間での売買契約(他人物売買)となる。
イ Bが従前Cに与えていた代理権が消滅した後であっても,Aが代理権の消滅について善意無過失であれば,当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。
【解説】 いわゆる表見代理の問題である。表見代理とは、実際には代理権がない又は代理権の範囲を超えた法律行為をした場合、取引の相手方の保護のため、代理権が有効にあったのと同様にしよう、という規定である。表見代理が成立するパターンは次の3つがある。 @代理権を与えているが、代理人がその代理権の範囲を超えた法律行為をした場合。 A実際には代理権を与えてはいないが、代理権を与えたかのような表示を本人がした場合。 B以前代理権を与えていたが、今は与えていない場合。 これらの場合で相手方が善意無過失の場合は、表見代理が成立する。相手方の保護を目的とするので、成立する要件として、相手方が善意無過失であることが要求されている。本選択肢はBの場合であり、相手方は善意無過失のため、Aは甲地を取得することができる。正しい選択肢。
【発展】 本選択肢でAが悪意または有過失の場合は、表見代理が成立しない。この場合も、選択肢アと同様に、他人物売買となる。 選択肢通りの場合、Aは表見代理の成立を主張し本人Bに責任を追及することもできるし、Cの無権代理行為として、Cに責任を追及することもできる。(判例)逆にCの方から表見代理の成立を主張し、自己の責任を逃れることはでいない。
ウ CがBから何らの代理権を与えられていない場合であっても,当該売買契約の締結後に,Bが当該売買契約をAに対して追認すれば,Aは甲地を取得することができる。
【解説】 無権代理の問題である。Cは代理権を与えられていないが、本人であるBが追認すれば当該契約は有効となる。事後的に代理権を与える、と考えれば理解しやすい。したがって、本選択肢は正しい。
【発展】 1.追認が得られない場合は、AはCに対して、無権代理行為の責任を追及することができる。つまり、他人物売買として、履行の請求をすることもできるし、損害賠償を請求することもできる。
2.本人が追認した場合の契約の効果は、契約の締結時にさかのぼって生ずる。
3.本人の追認は、相手方にしなければ、その相手方に追認したことを主張できない。ただし、当該無権代理人に対して追認したとしても、そのことを相手方が知れば、追認したことを主張することができる。
4.契約締結時に、無権代理について善意であった相手方は、追認がなされるまでであれば、当該契約を取り消すことができる。
5.無権代理行為の相手方は、本人に対し、追認をするか否かを一定の期間内に返答するように催告することができる。この期間内に何の返答もない場合は追認を拒絶したものとみなされる。 |