社会人の宅建試験勉強

【民法】物権

抵当権

◎抵当権とはどのような権利か?

1.抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2.地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。
 
※抵当権の対象は、『所有権』『地上権』『永小作権』
 
◎抵当権の効力の及ぶ範囲は?
1.抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。
 
※A土地上にB建物が建っている場合。
 
・A土地について抵当権を設定した場合は、A土地についてのみ抵当権の効力が及び、建物には及ばない、ということ。土地と建物は別個の不動産だから。これに比べて、A土地に一体化した植木などは、抵当権の効力が及ぶ。
 
・B建物について抵当権を設定した場合も同様に、A土地には抵当権の効力は及ばない。これに比べてB建物のふすまや畳などには抵当権の効力が及ぶ。(詳しくは抵当権の設定の時期などにより、諸説学説があるが、宅建試験では問われないので、以上のように覚えればよい)
 

2.抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。
 
※『果実』とは、土地に栽培している植物からの収穫(野菜や果物等)などと、土地や建物を第三者に貸したときの賃料などがある。
 
※抵当権が担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた家賃等にも抵当権の効力が及ぶ。

◎同じ不動産に複数の抵当権が設定された場合の順位は?

(原則)

1.同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。

1.抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2.前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
 
※原則として抵当権の順位は、登記の前後(順番)による。ただし、登記した抵当権の権利者(抵当権者)全員で合意をし、なおかつ登記をした場合は、全員の合意で定めた順位となる。
 
※抵当権を担保にさらに抵当権に対して抵当権を設定できる。これを転抵当という。例えば、
 
順位1  抵当権設定          抵当権者 X
 付記  1番抵当権転抵当権設定  転抵当権者 Y
順位2  抵当権設定          抵当権者 Z
 
 となっている場合、順位1番の抵当権者Xと順位2番の抵当権者Zとの間で合意をし、順位1番の抵当権を2番、順位2番の抵当権を順位1番とできる。
 しかし、こうしてしまっては、転抵当権者Yにしてみたら、せっかく順位1番ということで、転抵当権を設定したのに、2番に変わってしまう。このようなZを保護するために、利害関係者の承諾を得なければ、この順位変更はできないことにした。 

◎抵当権で担保される債権(被担保債権)の範囲の制限は?
(原則)抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる。
(例外)ただし、それ以前の定期金についても、満期後に特別の登記をしたときは、その登記の時からその抵当権を行使することを妨げない。
 
※この例外が宅建試験で出題される可能性は低い。
 
◎抵当権の処分(抵当権も物件だから自由に譲渡したりできるか)
1.抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし(いわゆる転抵当権の設定)、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2.前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
 
※出題される可能性は少ないかも知れないが、上記1.の抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄について
抵当権の放棄

放棄する相手は、抵当権を設定していない一般の債権者

放棄すると、放棄をした者と放棄を受けた者の債権額に応じて競売等により得た代金を配分する。

例) Aが抵当権者、債権額2,000万円
   Bが一般債務者、債権額3,000万円
  不動産が1,000万円で競売された。

  この場合は、Aの債権額とBの債権額の比率、2対3の割合でそれぞれ返済を受ける。つまり、Aは400万円、Bは600万円の返済を受ける。

抵当権の譲渡

放棄する相手は、抵当権を設定していない一般の債権者

譲渡すると、譲渡を受けた者が優先的に弁済を受ける。

例) Aが抵当権者、債権額2,000万円
   Bが一般債務者、債権額3,000万円
  不動産が1,000万円で競売された。

 この場合は、Bがまず優先されるので、全額Bが弁済を受け、Aは全く弁済を受けることができない。

抵当権の順位の放棄

放棄する相手は、抵当権を設定している抵当権者。

考え方は上記の抵当権の放棄と同様。登記された債権額に応じて案分される。

抵当権の順位の譲渡

放棄する相手は、抵当権を設定している抵当権者。

これも考え方は、上記の抵当権の譲渡と同様。

 
1.上記の処分をする場合には、第467条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2.主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
 
〜参考〜
第467条  指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

◎代価弁済
1.抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。

◎抵当権消滅請求
1.抵当不動産の第三取得者は、(抵当権消滅請求の手続、後記説明) の定めるところにより、抵当権消滅請求をすることができる。

2.主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。

3.抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない。

4.抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければならない。

◎抵当権消滅請求の手続 (出題される可能性低い)
 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、次に掲げる書面を送付しなければならない。
1.取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2.抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る。)
3.債権者が二箇月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、抵当不動産の第三取得者が第一号に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面

登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する。

◎抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力
※平成16年改正のため、出題可能性は今後も高い 
1.登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、かつ、その同意の登記があるときは、その同意をした抵当権者に対抗することができる。
2.抵当権者が前項の同意をするには、その抵当権を目的とする権利を有する者その他抵当権者の同意によって不利益を受けるべき者の承諾を得なければならない。

◎法定地上権
※出題される定番 
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
 
※あくまで、抵当権設定時点で土地と建物が同一の所有者である場合に限る。
 
◎抵当地の上の建物の競売
※いわゆる「一括競売」の規定で、これも出題の定番
1.抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
2.前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

◎抵当不動産の第三取得者による買受け
抵当不動産の第三取得者は、その競売において買受人となることができる。

◎共同抵当における代価の配当
※理解しにくいかも知れないが、比較的重要
1.債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
2.債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。

◎抵当建物使用者の引渡しの猶予)
※平成16年改正部分、出題注意
 

1.抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月(この期間がポイント)を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。(引渡しが猶予されるだけで、賃貸借契約による占有が認められているわけではない。賃借人が買受人に支払うのは家賃ではなく、不当利得の返還)
 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
2.前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1か月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

◎抵当権の消滅時効

1.抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

◎抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅
1.債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

1.地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。
 
※その他留意点として、抵当権を設定して担保される債権は将来発生する可能性がある債権も含まれる。
具体例。住宅ローンを組む場合、通常は銀行(債権者)がお金を貸し、銀行系列の保証会社(保証人)が、お金を借りた人(債務者)の保証人となる。この場合、抵当権者になるのは、保証会社が多い。保証会社は、万一債務者が返済できない場合、債務者に代わり、銀行へ返済する。この万一に備えて、抵当権を設定することができる。設定された時点では債権が発生していないが、将来発生する可能性のある債権を担保できるのである。
 実際に住宅ローンを組まれている人や、不動産関係の仕事をしている人は、謄本(登記事項証明書)を取得して見てください。登記原因に「年月日 保証委託契約による求償債権」と書かれているはずです。
 

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